ドッグラン・デビューの日。
2022年1月23日
カナデさんは犬対し警戒心が人一倍、否、犬一倍強い。
それもそのはず、カナデを里子として迎え入れる前の、カナデのご実家では柴犬3頭暮らしであったが、3歳の赤柴犬の姉と互いに流血の大喧嘩を経験してきたからだ。
先住犬である6歳の母柴と3歳の娘柴のところに黒柴仔犬のカナデが加わり、賑やかで平和な日常を過ごしてきたのだが、カナデの体も大きくなってきた月齢7ヶ月の時に、ちょっとした事をキッカケに3歳柴の嫉妬心やカナデの自我の発露などで序列争いに火がついて闘いは激化、とうとう、2頭の仲は修復不可能となってしまったのだった。
犬に噛まれる痛みや恐怖は強く記憶している。
カナデさん、だからこそ、犬同士で心を通わす喜びを思い出して欲しいんだよな、ジロさんは。
「カナデ、朝の散歩はドッグランに行くよ。」
(ドッグラン?なにそれ、美味しいのかな?)
「犬友作りに行くんだよ。はい、車に乗って、抱っこするよ。」僕が両腕を伸ばすと(了解デース)と、カナデは前脚を腕にかけた。ジロ&カナの抱っこはだいぶ板についてきたところだ。
それにしても秋田犬と比べて柴犬の体重の軽いこと、先代の秋田犬の介護の時には、抱き上げて階段を下りたらギックリ腰になってしまったことがある。
ドッグランデビューの日は土曜日とした。週末の公園には犬を連れてくる人は多い。
狙いは的中、たくさんの犬達がいる。お、丁度良いことにグレートピレニーズが居るではないか。
「こんにちは〜、あれま、お久しぶりです。」マスク装着で遠目には誰だか解らなかったが、飼い主さんは先代犬の頃からの犬友さん。
グレートピレニーズの飼育は三代目であり、優しくおとなしい犬に育て上げるご夫婦だった。
「カナちゃん、ほら挨拶してみなよ。大きいねえ、怖くないよ。」僕はピレネーの近くに腰を落として、「お名前なんでしたっけ?、あ、ユキマル君ですね、ふむふむ、お歳は7歳ですか、ユキマル先輩、仲良くしてね。」僕はユキマルの首を両手で撫でて、
「カナちゃん、来てごらんよ、大きくてカワイイよ。ほら。」
ピレネーの顔は本当にデカイ。秋田犬の顔も大きいが、更にその1.5倍はありそうだ。
ぬーと、頭が近付いて来ると、カナデはリードの長さいっぱいまで後退した。僕はユキマルのぶ太い胴体や首を抱きしめて、カナデに安全だよと、教えた。
ピレネーが身体の向きを反転させて後ろ向きになると、カナデは興味を持って近付こうとするも、ユキマルが再び顔を向けるとカナデは後退した。僕が「やっぱり顔が大きくてコワイよ〜。」と、カナデの気持ちを実況したら、飼い主夫妻は「ハハハッ」と、笑った。
(ジロさんの言う通りだわ。白いオジさん優しいのね、アタシも一緒に地面をクンクンしとこ。)
午後の散歩は日没の少し前。一緒に夕陽を眺める。
カナデ、大丈夫だ、犬友と遊べるようになれるよ。